言葉が全くわからない状態で上海から日本へ。ある男子学生の反骨精神


言葉が全くわからない状態で上海から日本へ。ある男子学生の反骨精神

ある日突然外国で暮らさなければならなくなったら、あなたはどうするでしょうか。
もちろん言葉は通じないし、周りに友達もいません。

早稲田大学 商学部に通う大学2年生のメイくんが上海から日本へ来たとき、彼はまさにそんな状況に置かれました。日本語がまったくわからない状態から彼はどのように勉強して大学に入り、大きな夢を描くまでになったのでしょう。

反骨心と思考力を武器に戦ってきた彼の、これまでとこれからについて聞きました。

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プロフィール

メイ・イェノンさん

筑波大学附属高校卒業、早稲田大学商学部2年。
13歳であった2009年12月に来日。
大学院を目指して奮闘中。今年の春休みにはpythonというプログラミングを習得したいと考えている。

〈言葉がわからなかったら、まず周りの言葉をよく聞くこと〉

日本に来たのは何年前ですか?

8年前です。両親の仕事の都合だったので、まだ子供の僕に選択権はありませんでした。上海には友達もたくさんいて居心地もよかったので、当時は悲しかったですね。

その頃、日本語は話せたのですか?

全く話せませんでした。ゼロの状態です。日本に来てからしばらくしゃべることができない期間が続きました。元々高くはないコミュニケーション力がさらに下がってしまうくらいに(笑)。

ゼロの状態から、どうやって日本語を話せるようになったのでしょうか。

僕が日本語を覚えるためにしたことは、まず学校や塾で周りの生徒や先生がしゃべっている言葉を「よく聞く」ことです。周りがしゃべっていることをなんとか頑張って聞き取って、自分でも使ってみたい言葉が出てきたらその言葉について自分の中で分析します。「この言葉を使ってみたい」→「この言葉はどういうときに使えばいいのだろう」→「その状況がきたら僕も使ってみよう」といった感じです。

これを毎日24時間ひたすら考えていました。要領は悪いのですが、これでなんとか日本語を話せるようになりました。

さらにその進化版として、塾の先生の話し方を真似するということもやりました。中3のときの塾の先生の口癖が「〜ですよ」だったのですが、よくよく観察していると先生は何かをわかりやすく説明するときに「〜ですよ」という口癖を使っていることがわかったんです。それで、僕も物事をわかりやすく伝えるために先生の口癖を真似させてもらいました。

先生だけではなく、親友をはじめとする周りの人たちの話し方がすべて今の僕に影響しているんです。3rd Classでも話し方のうまい先生や先輩のスキルをどんどん取り入れるようにしています。

日本へ来て、自分に変化はありましたか?

「考える」ということをしなくてはいけない状況になったことが大きいと思います。中国にいた頃は宿題が多くて考え事をする時間があまりなかったんです。中国では「学校=勉強」という考え方でかなり忙しいので。それが、日本へ来て時間ができたことと外国で暮らしていかなければいけないという厳しい状況に置かれたことで、ある日急に目覚めたんですよ。考えることに。

どのようなことを考えていたのですか?

中学高校の頃によく考えていたのは国語のことです。国語の授業で文章をたくさん読むじゃないですか。ほとんどの人って読んだらそれで終わりなんですよ。僕の場合は読んだ後もずっと引きずるんです。授業で勉強した文章を頭のなかでずっと反芻して文章ひとつひとつの価値を頭に全部インプットしました。ついつい物語の続きを考えてしまって、それが楽しすぎて授業中にぼーっとしてしまって先生に怒られたこともありました(笑)。

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やるならスケールの大きいことをしたい

国語のことをよく考えていたのには理由があるのでしょうか。

「勉強して偉い人になりたい」という気持ちがあったので、そのためにはいい高校に受かる必要がありました。高校に受かるためには何が必要かと考えたとき、僕の場合は国語の点数を死ぬほど上げる必要がありました。数学と英語については上海にいた頃に既に高校レベル手前まで学習していたのですが、先程も言った通り、国語はゼロからのスタートだったので。

だから、国語を勉強するときは、同じことをやっていても人より多くのことを吸収したいという心構えで勉強していました。その結果、知らないうちに考える習慣が身についてしまったようです。

将来は偉い人になりたいのですか?

子供の頃から「偉い人になれ」とよく言われていたんですよ。「大きな志を持ってください」とか。日本でも「少年よ大志を抱け、Boys, be ambitious.」ってよく言うじゃないですか。

そういった教えが頭の中にあるのももちろんですし、あとは、僕ものすごく反骨心あるんですよ。「ダメだ」とか「お前これ苦手だよね」とか言われるとめちゃくちゃ悔しくなってしまう。だから、日本へ来て逆境に身を置かれたことで上を目指す気持ちが強くなりました。

小学校の先生が「逆境は成長を助けるものだ」と教えてくれていたので、この状況で成長できたらひょっとしたら中国の頭のいい友達たちを超えることができるのではないかという自信が芽生えてきたんです。

具体的に将来どのようなことをしたいかは決まっているのですか?

エネルギー問題に取り組みたいと思っています。ただ、一口にエネルギー問題といっても色々なアプローチができるんですよ。たとえば、もし僕が人工知能を学んだとして、もしかしたらその人工知能がエネルギー問題を早期解決できるかもしれない。直接は関係なく見えるかもしれませんが、意外なところでつながってくる可能性があるんです。

だから、今の僕の目標は「多才でありたい」ということです。たくさんの武器を持って選択肢を広げたいという気持ちが心のどこかにあるんです。

何かしたいことが見つかったときに、それができる自分でありたいということですか?

そうですね。何かスケールの大きいことをやりたいと思っています。だからエネルギー問題と言ったんですけれども。大学に入った当時、親友に語っていた目標は「理系に戻る」か「国連の職員になる」でした。

両極端な二択ですね。

そうですね。でも、どちらにせよ国際規模・地球規模の問題に取り組むものじゃないですか。だからどっちでもいいかなと思っていたんです。結局今は理系に戻ってエネルギー関連を学ぶ道を選びましたが。

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人付き合いで大切にしているのは「見返りを求めない」こと

今までの話を聞いていてもメイくんがすばらしい先生や友人に出会えたことが伺えますが、メイくんが大切にしているのは「人とのつながり」だそうですね。

はい。日本に来たとき、初めは友達ゼロじゃないですか。そのときにまず人とのつながりの大切さを痛感しました。その後塾や中学校で友達ができたのですが、彼らは僕の拙い日本語でもちゃんと聞いてくれるんですよ。とても優しく接してくれて、毎日しゃべりながら帰ってきていました。彼らとは今でも仲が良いです。

素敵なお友達ですね。人付き合いで大事にしていることはありますか?

僕がいつも気にしているのは「見返りを求めない」ということです。困っている相手を助けてあげるのは結構なことですが、自分が困っているときに相手は必ずしも助けてはくれないし、そもそも相手が助ける力を持っているとは限らないじゃないですか。

そのときに「なんで助けてくれないんだ」と思ったって相手からしたら無理な話ですよね。だから、人が困っていたら僕は全力で助けますが、僕が困っているときに助けてくれなくても別に僕は気にしないよ、というスタンスをいつも心がけています。相手に罪悪感を感じさせないようにする。

そうするようになったのには何かきっかけがあるのですか?

僕の親友の一人にとても優秀な人物がいて、僕はいつもその親友と一緒に話しながら帰ったりわからないことをしょっちゅう聞いたりしていたんです。だけど、向こうからは助けてもらえるのだけど、僕は彼を助けられないんです。僕の力では彼にしてあげられることが何もない。

もう人としての生き方が圧倒的に上なんですよ。彼は男子校なのに恋愛相談も彼のほうが得意という有様で。それでも僕は彼のことを親友だと思っているし、僕が返せるのは信頼だけだな、と思いました。それも親友の一種だな、と。見返りを求める関係性は僕と彼の関係性を否定することになってしまうんです。

先生とのエピソードは何かありますか?

高校時代、塾の先生と高校の先生がそれぞれ違う切り口で同じことを言っていたのが印象に残っています。

ある日、塾で数学の先生がサグラダ・ファミリアの話をしていたんです。そのとき先生から「メイくん、サグラダ・ファミリアの○○○については知っていますか?」と質問されました。僕は「学校で習っていないんだからわかるわけないじゃないですか」と答えました。それに対して「学校で教えないからといって勉強しなくていいんですか」と言われたんです。勉強は自分でするものだということを強く意識させられた瞬間でした。

一方で高校のときの担任の先生が、卒業式で「人生にナビはない」と言っていたんです。「皆さんは今まで言われたとおりに勉強して塾に入って受験をして大学に入るわけですが、それは全部敷かれたレールです。これからの人生にレールはないでしょう」と。

どちらも同じことを言っているんですよね。自主的に動けということを言っているんです。

今のメイくんは自主的に動いている?

僕は元々理系に進みたかったのですが、理系の大学に受からなくてセンター利用で早稲田の商学部に入ったんです。それでもやはり理系に戻りたくて今は理系に戻るために勉強をしていますが、ここから理系に戻るためのレールなんてないんですよ。自分でナビを作るしかない。そういう意味では自主的に動いているといえます。

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遊んだっていいじゃないか

最後に、この記事を読んでいる学生の皆さんへメッセージをお願いします。

以前に別のインタビューでも言ったのですが、大学は遊びの誘惑に満ちています。僕が大切にしているのは、まずここを否定しないことです。僕は「大学は遊ぶ場所ではない」という考え方は嫌いです。だってみんな遊びたいし遊んでるじゃないですか、どう考えても(笑)。

でも絶対24時間遊んでいるわけじゃないですよね。だったら、その多少余った時間をほんの少しでもいいから自分の未来につながることを考える時間として使ってもいいんじゃないかと思うんです。遊ぶ時間もちゃんと確保しながら両立しましょうね、と。

ありがとうございました。

 

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メイくんを取材して

本人は自身のことをコミュニケーション力が高いほうではないと言っていますが、言葉がまったくわからない状態で外国へ来て8年続く人間関係をゼロから構築できるって相当なコミュ力に思えます。でも本人が言うのならきっと周りの人たちがよほど素晴らしい人たちだったのでしょう。素晴らしい人たちを引きつけるのも人徳と才能ですね。広い世界でのスケールの大きな活躍を楽しみにしています。

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