世界の平和を食選択から。食と社会のコネクターを目指す山本莉央さん


執筆者:嶋田薫子

プロフィール

山本莉央(やまもと・りお)さん

兵庫県出身。慶応義塾大学環境情報学部 3年生。

2016年8月から1年間、アメリカ・コロラド州に留学。帰国後、コロンビアにて行われた国際ユースサミット・One Young World 2017 日本代表団に選抜・参加。食と環境問題に強い興味を持つ。趣味は、ナッツなどの穀物探し。


 

「人生は選択の連続だ」という有名な言葉がありますが、全ての人が毎日必ず行っている「選択」、それは「食」選択。あなたも、1日に2-3回「何を食べよう?」というクエスチョンに出会うでしょう。

多くの人が、食選択は「自己完結する行為」との認識を持つ中で、山本さんは「自らの食選択が、実は世界の課題に関与している可能性があるのでは」との見解を持って、食と付き合っています。単に、健康志向で食べるものに気をつかう人は多いですが、山本さんの食へのこだわりの原点は、グローバルな問題と食の関係性における問題意識にありました。

 

食へのこだわりの原点

 「食」に対する興味やこだわりが生まれたきっかけを教えてください。

 

元々幼い頃から、アレルギー体質だったので、親から食にこだわるように言われていました。でも、食に対しての考えが大きく変わったきっかけが、祖母が亡くなり、彼女の作るロールキャベツが食べられなくなった時でした。彼女の料理が食べられなくなることの寂しさと、料理とともに彼女の思想・考え自体が無くなっていくような悲しみを感じました。そしてその時、「食」には、それを作る人の思いや考えを体現する働きがあることに気づきました。

 

なるほど。「思い出の味」という言葉があるように、食は「食べる」という行為そのもの以上の意味を持っている感じがします。

 

そうですね。祖母の時以外でもそのことを感じることは何度かありました。

今まで、ホストファミリーとして何回か外国人留学生を受け入れてきたのですが、その際も、食を通してその人の生い立ちを知れたりしました。私にとって、「食」の空間は、相手のことを深く知るうえでの大切な空間だったのだと感じます。

また、1年間アメリカの大学に留学をしていたのですが、ルームメイトがビーガン(完全菜食主義)だったことから、「食に対する人々の価値観」にも興味を持つようになりました。

 

 ビーガンとは、日本ではあまり聞き慣れない言葉ですね。

 

ビーガンは、動物由来食品を一切口にしない菜食主義のことを指します。

「ビーガン=動物愛護者」と考えがちですが、調べていくうちに、実は「環境保護」という観点からビーガンになる方も沢山いることを知りました。そして、「食べると言う行為が、少なからず地球環境に影響を与えている」という意識を持つ人たちに魅力を感じるようになりました。

そして、自分もそのような意識を持ちながら「食」と付き合いたいと感じたのです。ルームメイトとの出会いは、自分の「食」への知的好奇心の出発点だったと感じます。

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自分の食選択がどのような影響を持つのかを考える

 ご自身の食へのこだわりを教えてください。

 

食べ物を買う時は必ず原材料を見ます。例えば、チョコレートを食べようとしても、もしその製品の原材料名に「砂糖」が初めにきていたら、私にとって、それはただの「砂糖」なんです。だからこそ、チョコレートはカカオ含有率が高めのものを食べます。(笑)

素材をそのまま楽しみたいという考え故なのかもしれません。

また、素材そのものへのこだわりだけでなく、自然由来のもので包装紙が少ない製品を選ぶなど地球環境のことを考えた食選択を心がけています。

 

すごいこだわりですね。なぜここまでのこだわりを持つのですか?

 

先ほども言ったように、自分の食選択がどのように社会に影響を与えているのかを意識しているからです。多くの人が、「食べる」という行為を自分の中で消費し、完結する行為と考えますが、私自身、実際もっと意味を持っている行為ではないかと思うのです。

現在、世界の約70%の水が、家畜のために使われているのですが、それが貧困地域の水不足や民族対立を引き起こしている原因でもあります。もし、自分が動物由来のものを少しでも控えたら、それを緩和させることに寄与できるのではないかと感じるのです。

「食選択と戦争の相関性」という話は、ワンヤングワールドでも出てきました。その時、自分の問題意識を再確認した気持ちでしたね。

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食選択が、世界の問題に繋がっているという意識は多くの人が持てるものではないですよね。

 

「民族対立は、その地域だけの問題ではない」とは、きっと多くの人が頭ではわかっているだろうけど、それを実感する機会ってなかなか無いのですよね。私の場合、「食」に関わっている時に、唯一そのことを実感するのです。

日々の食生活の中で、実は民族対立を惹起させるような行動をとっていることに気づかないまま、平和について考えるなんてことは矛盾している気がして。

だからこそ、食選択をする時、少しでも地球環境のことを考える人が増えればいいなと思っています。

 

「食に対してコンシャスな人を増やす」という強い思い

大学ではどのような学びを行なっているのでしょうか?

 

ゼミでは、「食に対してコンシャスな人を増やしたい」という私自身の思いを軸にしながら、「大学生が健康と地球環境を意識した食選択を実現するためのアプローチ」を研究しています。

価格・美味しさ以上の付加価値を健康や環境保護につけるためにはどうすれば良いのかを、食育やマーケティングの観点から考えたりしています。

先日は、ゼミの友人と、素材にこだわったエクアドル産のチョコレートのコンセプトや売り出し方法を考えて、実際にファーマーズマーケットで販売するなどのフィールドワークを行いました。実践によって学ぶことの重要性を感じましたね。

 

金銭的余裕の少ない学生が、「低価格」に重おきを置くのはわかります。私もその一人です…

 

もちろん「全ての人がビーガン」なんていう世の中は非現実的ですし、そうなるべきとは考えていないです。

でも、食選択をする時に、自分の「食べる」という行為が環境汚染や民族対立に関与している可能性があることを少しでも意識してほしいって感じます。

また、一日三食、適切なものを選択することは、ちょっとした「成功体験」に繋がるのではないかとも考えています。日々の中で、それを積み重ねることで自己効力感を得られる効果がないかということも、今後の研究テーマです。

 

海外経験から、食選択の多様化の必要性を実感。

海外で得た、食を取り巻く環境についての気づきを教えてください。

 

One Young Worldでのケータリングで、ムスリム・ビーガン向けの食事が用意されていた時や、レストランのメニューで「ビーガンマーク」を見た時に、日本における食選択の多様化の必要性を感じました。

やはり日本は、外食産業においてもそのような工夫が足りないですし、そもそも食にこだわりを持つ価値観を理解しにくい文化の中にあるのだと思います。

色々な食志向の人が満足できるような食環境や、食への異なる価値観を認めあえる社会が今後必要なのではないでしょうか。

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山本莉央さんが描く未来。

山本さんが理想としている食を取り巻く環境のかたち、そして今後のご自身のビジョンを教えてください。

 

食を取り巻く理想環境としては、「食べる」という行為が、少なからず地球環境に影響を与えていることを理解している人が増加している状態。そして、健康と地球環境という両点で持続可能な食選択が可能な状態です。

その2つの状態が揃った時に、日本における食の多様性が実現されるのではないかと思うからです。

自分の将来の理想像は、自分の食に対する価値観やこだわりを話した時に「素敵」って思ってもらえるような影響力を持った人です。かつて、友人の食に対する思想に私が魅了されたように、私がきっかけで食にコンシャスになる人が増えたら嬉しいですね。

そして、消費者の食選択行動に変革を起こしていきたいです。

 

山本さんを取材して

 

山本さんとは、One Young Worldの同じ参加者として長く一緒に居たものの、今回改めて彼女の食に対するこだわりやその原点、そしてその背景の問題意識について聞きました。食選択とグローバル課題の関係性については、何度も頷き、彼女の新たな視点に感動することが多かったです。

私が「多くの人が気づかない部分に目を向けるのはすごい」と伝え、彼女が「食のこだわり多すぎて面倒臭がられるよ」と返した時に、その現状こそが「日本における食の多様性の欠如」を物語っているように感じました。

今後、グローバル化が進む中で、広い食志向の人に対応できるような、多角面からの社会設計が求められると思いました。

友人として、今後も彼女のことを近くで応援させていただきたいです。

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