自分を変えたい社会人へ-前篇 「嫌われる勇気」をヒントに考える


自分を変えたい、と思い悩む社会人は多いだろう。自分を変えるために努力するものの、長続きせず挫折してしまう。挫折するたびに自分を責めしまいどうせ自分は変われないと落ち込んでしまう。

今回は2回に分けて「嫌われる勇気」のアドラー心理学を参考に
自分を変えるためにはどうしたらいいのか、そのヒントを考えてみる。

前篇の今回は、自分を変えられない理由について考えてみる。

あなたは原因論か、それとも目的論か

 

物事の解釈の仕方を2つに分けることができる。

原因論と目的論である。あなたは普段どちらの立場で考えているだろうか。

・原因論とは?

あらゆる結果の前には必ず原因がある。現在は過去の出来事によって規定されるもの。私たちの現在、未来はすべてが過去の出来事によって決定済みであり動かしようもないと考える。
例)引きこもりが外に出られないのは<現在>、過去にいじめられた経験から人と話すことに不安を感じるからだ<原因>。

・目的論とは?

トラウマ(過去の心の傷)を否定。人はまず果たしたい目的があって、それに合致する原因をあとから用意する。私たちの未来は今この瞬間の解釈・選択次第で変えられると考える。
例)引きこもりが外に出られないのは、不安だから外に出られないのではなく、外に出たくない<目的>から、不安<原因>という感情を作り出している。

いかがだろう。あなたはどちらで行動しているだろうか。アドラーは後者の目的論の立場に立つ。そして、人は本人が望めば誰でもいつでも変わることはできる、と主張する。しかし多くの人は原因論の立場に立つため、自分を変えたいと考えても変われないジレンマに陥るケースが多い。

自分の意味づけ次第で人生は変えられる

 

アドラーはトラウマの存在を否定する。
いかなる経験もそれ自体は、成功の原因でも失敗の原因でもない。アドラーは、人は経験の中から目的にかなうものを後から探し出すと言う。自分の経験によって今現在が決定されるのではなく、経験に自分が与える意味よって、自らの今現実を決定しているのだ。言い換えれば、人は過去の経験に「どのような意味を与えるか」によって自らの生を自由に決定できるのだ。

つまり、人生とは誰かに与えられるものではなく、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分次第であるとアドラーは力説する。

自分を変えるためにまず大切なことは、「何があったか<過去>」ではなく、自分自身がそれを「どう解釈し意味づけをするか」だといえる。

「変わる」ことの第一歩は自分を「知る」こと

 

人は変われる。自分は変えられる。それでも世の中の多くの人が変われないのはなぜだろうか。
アドラーはこの点について面白いことを言っている。

自分がどれだけAさんになりたいと願っても、Aさんとして生まれ変わることはできない。
あなたがAさんになりたいと考えている限りあなたは一生変わることはできない。
あなたはAさんではない、あなたはあなたであっていい。

しかし、もしもあなたが幸せを実感できずにいるのならば、このままでの自分でいいはずがない。
そこで大切なのは「何かが与えられていること」ではなく「与えられたものをどう使うか」という考え方だ。

あなたがAさんなり、ほかの誰かになりたがっている限り変わることはできないのは、「何が与えられているか」にばかり注目しているからだ。もう少し噛み砕くと、今の自分を愛せず幸せを感じられないので、今の自分を捨てて「誰かへの生まれ変わり」を望んでいるということだ。こう考えている限りは一生自分を変えることはできない。

大切なのは「与えられたものをどう使うか」に注目することだ。私たちに必要なのは自分を「交換」することではなく、自分を「更新」する作業なのだ。今の自分を知り、今の自分であることを受け入れることに焦点を当てることからすべてが始まるのだ。

今のあなたが不幸なのは自分で不幸であることを望んでいる

 

わかっていても変われない。変わりたくても変われない。そんな人は、実は自分で変わらないという選択をしているというのがアドラーの主張だ。アドラーは性格や世界観、人生の在り方というニュアンスで「ライフスタイル」という言葉を使う。

ライフスタイルが先天的に与えられたものではなく、これまで考えてきた通り、自分で選んだものであるなら、再び自分で選びなおすことも可能なはずだ。それでもライフスタイルを変えようとしないのは、いろいろと不満はあったとしても「このままの私でいることが楽であり安心」だと考えている場合が多い。つまり、今の自分が不幸なのは、まさにこの自分が不幸を選んでいるというのだ。

逆にいえば、幸せになる勇気がその人には足りていないのだ。

あなたには前に進む少しの勇気が足りていない

 

自分が変われないのは、自分自身が変わらないことを決断している結果であると確認した。それでは、自分のこれまでのライフスタイルを変えるためにはどうしたらよいのだろう。

そのためには居心地の良い今のライフスタイルをやめる、という決心をすることが必要だ。
「もし●●だったら、▲▲できるのに」と今のライフスタイルを変えようとせず、変わった後の自分の可能性の中で生きているうちは人は決して変わることはできない。作家になる夢を描きながら、コンクールにちっとも応募しないのは、忙しいからではなく、多くの場合は応募しないことによって「やればできる」という可能性を残しておきたいだけなのだ。

コンクールに応募して落選するならばそれでいい。そうすればもっと成長できるかもしれないし、別の道に進むべきだと理解できるかもしれない。いずれにしろ今よりも前に進むことができる。ライフスタイルを変えるとは、勇気をもって前に進むということなのだ。

アドラーは、これまでの人生に何があったとしても今後の人生をどう生きるかには全く影響がないと主張する。世界や自分への意味づけ(ライフスタイル)を変えれば、世界との関わり方、そして行動までが変わらざるを得なくなるのだ。

あなたは「あなた」のまま、ただライフスタイルを選びなおせばいい。

自分の人生を決めるのは、今この瞬間のあなた自身なのだ。

目的論の立場に立って、過去に影響されることなく、自らの人生を、ライフスタイルを自分の手で選ぶのだ。私たちにはその力がある。次回はこのライフスタイルを選択するための勇気について考えたいと思う。